基調講演

 

基調講演1

151_fujita_k_0-2

藤田耕司 (京都大学大学院 人間・環境学研究科)

[生物言語学・進化言語学・生成文法]

URL: https://www.h.kyoto-u.ac.jp/academic_f/faculty_f/151_fujita_k_0/

キーワード:

普遍文法、ヒト型言語器官、回帰的統語演算、併合、最適設計、言語の起源・進化、運動制御起源仮説

講演タイトル:

「人間言語はどのようにして生まれたか
―併合がもたらす統語と語彙の平行進化―」

要旨:

かつて人間言語の起源・進化は永遠のmysteryだとされたが,近年の学際的な進化言語学の進展により,解決可能なproblemへと転化しつつある.言語進化を理解するには,まず言語とは何か,どのような仕組みを備えた形質なのかを正しく理解しなければならない.言語は複数の下位機能の集合であり,そのほとんどは他種が持つ前言語的な能力と共通である.その中で,特に人間固有・言語固有だとして注目されているのが,階層構造への依存性である.人間言語は意味と音声を言語シンボル(語 word)の(線形順序ではなく)立体的配置によって繋ぐシステムであり,このような仕組みを持つコミュニケーション能力は他種では報告されていない.また,この語も他種の信号(警戒コールなど)とは決定的に異なる特性を持つ.ここから,言語進化の説明には少なくとも2つの言語固有の下位機能の進化の説明が必要となる.すなわち,階層構造を生成する統語演算システム(syntax)と語を生成する語彙システム(lexicon)である.これまで,この2つは独立した能力であるとされ,別個の進化的由来を想定することが常であったが,この講演では,これらが実は同じ能力(併合 Merge)に端を発しており,平行的に進化したものであるという可能性について検討する.さらに,この併合の起源・進化についても考察し,講演者の考える「運動制御起源仮説」について解説する.

参考資料:
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0911604416300288


基調講演2

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狩野文浩 (京都大学 野生動物研究センター)

[大型類人猿の比較認知・感情研究]

URL: http://www.fumihirokano.com/p/main-page.html

キーワード:

Comparative Psychology, Developmental Psychology, Ethology, Neuroscience, Cognitive Psychology, Animal Behavior

講演タイトル:

「類人猿も他者の思考を推し量る
―アイ・トラッキングを用いた「誤信念」理解の研究―」

要旨:

他者の「心」を理解する能力は社会生活の基本です。この能力は、ヒト以外の動物にも存在することが知られています。しかし、ヒト以外の動物が、「他者が現実とは異なる状況を信じていること」を理解することを示した研究はこれまでなく、ヒト特有の高度な認知能力であると考えられてきました。例えば、ある人物Aが引き出しにペンをしまい外出し、不在中に他人がペンを筆入れに移したとします。帰宅したAがペンをとろうとまず探すのは引き出しでしょうか、それとも筆入れでしょうか。ペンが筆入れにあるにも関わらず、Aが引き出しを探すと類推できるのは、他者が現実とは異なる状況を信じていると理解しているからです。引き出しに向かうAの思考を「誤信念」と呼びます。つまり、他者の頭の中にのみ存在する仮想現実です。それを理解する能力があるということは、他者の心的状態を本当に理解しているという一つの強い証拠になります。最近、アイ・トラッキングという視線を記録する装置を使って、類人猿がヒトと同様に他者の「誤信念」に基づき予測的な注視をすることを明らかにしました。今回のプレゼンテーションでは、この研究と研究の背景を紹介すると共に、なぜ類人猿が視線を利用した「誤信念」課題に成功し、これまでの伝統的な「誤信念」課題に失敗してきたのか、そこに何か認知メカニズムの違いがあるのか、考察してみようと思います。

参考資料:
http://science.sciencemag.org/content/354/6308/110

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