プログラム

以下のプログラムを予定しています.

12月10日(土) : 1日目

時間 内容 場所
(12:00-13:00)
12:30-13:00
13:00-13:05
13:05-14:05
14:05-14:15
14:15-15:15
15:15-15:30
15:30-16:30
16:30-16:45
16:45-18:15
18:15-18:30
18:30-20:30
(LEBS 編集委員会)
受付・ポスター貼り出し
開会挨拶
基調講演1(藤田先生)
休憩(10分)
基調講演2(狩野先生)
休憩(15分)・ポスター貼り出し
口頭セッション1(60分)[3件]
休憩(15分)・ポスター貼り出し
ポスター発表コアタイム(90分)
懇親会準備 (15分)
懇親会
第5会議室
大集会室前
大集会室
〃〃

  

12月11日(日) : 2日目

時間 内容 場所
09:00-09:30
09:30-10:30
10:30-10:40
10:40-12:00
12:00-13:10
(12:10-13:10)
(12:10-13:10)
13:10-13:40
13:40-14:40
14:40-14:55
14:55-16:15
16:15-16:40
受付
口頭セッション2(60分)[3件]
休憩(10分)
口頭セッション3(80分)[4件]
休憩・昼食(70分)
(HBES-J 理事会)
(ポスター撤去)
総会(30分)
口頭セッション4(60分)[3件]
休憩(15分)
口頭セッション5(80分)[4件]
諸連絡・若手奨励賞表彰・閉会挨拶
大集会室前
大集会室〃

第5会議室
大集会室


 

 

HBES-J2016 Program & Abstract

HBESJ2016_Program & Abstract PDFダウンロード

(ver1.1 16.12.06 更新)

 

 

Program

*:若手奨励賞応募

#:SNSでの言及を許可しない

Oral

口頭セッション1 12/10 15:30-16:30

O1 階層ベイズモデルで解く言語と思考の関係

O2# 再帰的事象の認識における「心の理論」と「論理-数学的知能」の関連性

O3 人類進化論と社会的遊び

口頭セッション2 12/11 09:30-10:30

O4# 文化的性淘汰によって奇妙な文化が広まる条件

O5*# 琉球列島における民謡の文化進化

O6* 紛争下における集団の分裂統合:コンゴ内戦を例に

口頭セッション3 12/11 10:40-12:00

O7# ヒトの繁殖戦略の包括的理論に向けて

O8# 集団内の上下関係がUltimatum Gameにおける意思決定とテストステロンの働きに与える影響

O9* 金銭罰から象徴罰へ:文化的集団淘汰に依らない罰の進化

O10 暴力の進化論と心理-社会的秩序生態学の統合ーー学校のいじめをモデル現象として

口頭セッション4 12/11 13:40-14:40

O11* Mutual Aid Gameにおける間接互恵性の進化

O12* “協力的パーソナリティ”は安定か?:集団場面での役割可塑性に関する実験的検討

O13* カープを応援し続けるのはなぜか?――カープファンを対象とした集団地位の効果の検討――

口頭セッション5 12/11 14:55-16:15

O14* Warm Heart, but Cool Head: 援助行為における熟慮・計算の重要性

O15* 二者の相互作用による知覚傾向の収束:心理物理的技法による検討

O16* 他者のためのリスク決定を支える認知過程の研究 ーマウスラボとfMRIによる検討ー

O17# イヌは同種他者の選択にどう影響されるか ―イヌ間の社会性及び同調傾向についての検討

Poster コアタイム 12/10 16:45-18:15

P1* 語彙・文法の獲得/損失における人口規模の役割

P2 コーディネーションゲームにおける記号生成確率モデルを用いた「意味」の推定

P3 コミュニケーションの成立を成り立たせる記憶特性のシミュレーション

P4* ニホンザルの音声話者交代における発声間隔の調整

P5*# 学習により発現するシンタクスにおけるポット型Merge

P6* 語彙項目に焦点を当てた言語機能の進化

P7* 統計的構造に適応した社会的規範の学習方略―モデルフィッティングの手法を用いて―

P8 文化伝達期間をもつ生活史の進化可能性を探る数理モデル研究

P9# 累積的な文化と垂直伝達率の進化モデル

P10 文化進化研究のための人類学データベース構築

P11* 社会的支配志向性に対する外集団脅威の状況手がかりの影響―性差に着目した検討ー

P12*# サイコパシーの遺伝的基盤:μ-オピオイド受容体遺伝子とオキシトシン受容体遺伝子による検討

P13 「かわいさ」の発達的変化の種間比較:就巣性-離巣性の観点から

P14 配偶者に対する接触回避および愛情の年齢変化

P15* 配偶者選択がヒトの顔面形態の集団間差異に与える効果

P16* 強化学習モデルを用いた学習戦略の進化動態についての再検討

P17# 「法的『トロッコ問題』の初調査実験:倫理問題との回答データの異同分析」

P18* 5人のきょうだいを犠牲にすることは功利的か?:認知負荷を用いた検討

P19*# パレイドリアにみられる個人差と適応的意義

P20*# フィールドにおけるサンクショナーに対する評価

P21* 利他主義者の見極めは気分に影響されるのか?

P22*# 蜘蛛の絵は独裁者ゲームにおける利他行動を促進するか?

P23* 内集団をひいきすることによる一般交換の成立機序

P24 日本先史時代における暴力と戦争

P25* 離れたくないから傷つける

P26* 1歳半児が示す自他の知識・知覚状態の差異への感受性: 一人称および三人称的視点からの検討

P27 コストのかかる旗としての道徳:進化シミュレーションによる予備的検討

P28* 他者の人間性の見極め能力と排除回避傾向の関連性

P29* コストリーシグナリングが間接互恵状況における協力的均衡へ及ぼす効果

P30* 協力者は協力的な相手を短時間で探索する?~報酬分配者の選択に協力性が及ぼす影響~

P31# 分業における協力の進化と罰について:産業廃棄物の不法投棄を例に

P32 支配傾向の高い人は謝らないのか?

P33# サイコパシー傾向と集団間葛藤-内集団協力と外集団攻撃の性差

P34 囚人のジレンマにおける共起ネットワークの性差

 

 

Abstract

Oral


O1 階層ベイズモデルで解く言語と思考の関係

Rethinking the pronoun-drop effect with Bayesian multilevel model

リー ショーン (早稲田大学アジア太平洋研究科)

Abstract: ここ数十年の言語学と心理学の研究から、「言語は話者の思考や行動を形成する」という可能性が示唆された。この「言語相対性仮説」とも呼ばれる知見は、色んな意見と証拠が錯綜しているものの、地球上の言語の多様性と思考の多様性が連動している可能性を述べている点で更なる検証に値する。そこで、発表者は、これまでの言語学と心理学の文献から言語相対性仮説に関連した知見を網羅し、言語進化学の枠組みで捉え直す作業に取り組み、その中から特に「主語省略効果」という仮説に注目した。この仮説は、日本語のように話者が自分自身を示す「主語」を省略することが出来る言葉(例:[主語省略]これは面白いと思う)を使う人は、英語のように主語の省略が出来ない言葉(例:[I] think it’s interesting)を使う人に比べて自己顕示欲が低く、集団主義が強い傾向にあると主張する。この仮説は約20年前に提唱され、その後数百回も再現された知見ではあるが、現代の言語進化の観点から見た時に一つ大きな問題点がある。それは、言語はお互いに「系統関係を持つ」ということを全く考慮していない点である。つまり、主語省略効果は、言語データに内在する非独立性を補正せずに行われた分析結果であるため、false positiveを報告している可能性が高い。そこで発表者は、元の研究で用いられたデータを、階層ベイズモデルを使い、非独立性を補正した上で再分析した。本発表では、その結果の報告と科学研究の再現性についての話題を提供したい。

Keywords: 言語、言語相対性、階層ベイズモデル

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O2# 再帰的事象の認識における「心の理論」と「論理-数学的知能」の関連性

Relevance of recognition of recursive : ”Theory of mind ” and mathematical intelligence

時田 真美乃(信州大学), 鳥山 理恵(東京大学),平石 界(慶應義塾大学)

Abstract: 「私は(読者が(この著者は勘違いしている)と思っている)ことを知っている」といった心の状態についての再帰的事象を認識する能力には、論理-数学的知能が関連するだろうか。本研究では、金額当てゲーム(時田・平石,2015, HBES-J報告)を用いて、3次および5次の志向意識水準を用いた回答の割合と,論理-数学的課題(if文for文の課題)の5次までの多重ループ課題との正答の割合の関係性を調査した。結果は,論理-数学的課題において5次までの多重ループ課題を正答するグループは,金額当てゲームにおける3次および5次の志向意識水準を用いた回答においても,正答率が高かった.一方,金額当てゲームにおいて正答率が高いグループのうちの約半分は,特に論理-数学的課題の得点と関係性がなかった.このことから,再帰的事象の推論の一部について,社会的知能と論理-数学的知能が共通領域として存在する可能性と,共通領域があるかは分からないが,論理-数学的な再帰的思考能力の高い人は,その知能を使用して,社会的知能の課題をシステマティックに解いている可能性の2つが示唆された.

Keywords: 心の理論,再帰,高次

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O3 人類進化論と社会的遊び

Human evolution and social play

島田 将喜 (帝京科学大学)

Abstract: ダンバーR.の人類進化論は以下のように議論が展開する(Dunbar 1998; 2014)-霊長類は毛づくろいを通じて集団メンバー間の社会的紐帯を形成する。集団サイズが大きくなればより長時間を毛づくろいに費やす必要が生じる。人類進化過程において脳の大型化に伴い新皮質割合から予測される集団サイズは、時間収支的に毛づくろいだけでは紐帯維持が不可能なまでに増大したはずだ。したがって毛づくろい以上に効率的な紐帯維持手段が進化したはずで、それらこそは「笑い、歌・踊り、物語」だった-発表者はダンバーの基本論理を支持しつつも効率的紐帯維持手段については「遊び」の可能性を提案する。野生ニホンザルのコドモ同士の遊び、毛づくろい、アソシエーションネットワークの比較によれば、遊びはアソシエーションとの類似性が高く、かつ前の秋の遊びは毛づくろいと同様に次の春のアソシエーションを強める機能のあることが示唆された。これは仮説を支持する結果である。

Keywords: human evolution, social play, allogrooming

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O4# 文化的性淘汰によって奇妙な文化が広まる条件

Conditions for strange cultural traits to be favored by cultural sexual selection

中橋 渉(総合研究大学院大学)

Abstract: 装身具や芸術、巨大なハンドアックスなど、一見生存に直接役立たなさそうな文化が人類にはよく見られる。これらはしばしば、異性を魅了して配偶者獲得において有利になるためのものであると言われるが、そのような説明では、生存に役立たないような文化がなぜ異性に好まれるのかという疑問が残り、明らかに不十分である。これは性淘汰の議論においてよく見られる間違いであるが、好みも淘汰圧のかかる進化形質であり、装飾形質と共進化することを見落としてはならない。またこの問題には、他の生物の一般的な性淘汰との大きな違いが2つある。1つは、これらの文化が異性からの人気に合わせて後天的に改変できうるものであること、もう1つは好みも学習によって非遺伝的に伝達されうることである。そこで、異性を魅了するための生存に役立たない文化と、それに対する文化的な好みの共進化モデルを構築し、これらが文化共進化によって集団に広がる条件を求めた。

Keywords: 性淘汰、文化進化、現代人的行動

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O5*# 琉球列島における民謡の文化進化

Cultural evolution of folk songs in the Ryukyu archipelago

西川 有理(東京大学), Sean Lee(早稲田大学), 井原 泰雄(東京大学)

Abstract: 文化はヒトという動物が示す顕著な特徴の一つである。ある種の文化形質は個体間の文化伝達により集団内に普及し、世代を超えて維持される。この過程によって生じる集団の文化的構成の時間に伴う変化を文化進化と呼ぶ。本研究は文化形質としての音楽に注目し、琉球列島における民謡の文化進化を分析するために「日本民謡大観(沖縄・奄美)」(日本放送協会編)に収録されている採譜資料から、曲間の相違度の分析、集団構造の分析、ネットワークの分析を行った。研究の第一の目標は、民謡の地域による違いから人の移住の歴史を再構築することである。第二の目標は、民謡の社会的機能(ジャンル)と進化的特徴(進化速度および水平伝達の寄与)の間の法則性を発見することである。これらの成果は、これからの文化進化研究における手法選択の指標になると期待される。

Keywords: 琉球列島, 音楽, 文化進化

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O6* 紛争下における集団の分裂統合:コンゴ内戦を例に

Fission-fusion of groups in conflict: the case of the Congolese civil wars

大石晃史(東京大学)

Keywords: 集団、紛争、ネットワーク

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O7# ヒトの繁殖戦略の包括的理論に向けて

Toward an inclusive theory about the human reproductive strategies

長谷川眞理子(総合研究大学院大学)

Abstract:  ヒトの、とくに女性の繁殖戦略に関して、生物学および心理学の知見を包括的に考察することによって、中絶、嬰児殺、児童虐待から少子化まですべてを説明する理論を構築することができるということを概念的に示したい。出発点は、ヒトは共同繁殖の動物だということである。ヒトは、両親のみならず多くの他者の協力を得なければ子育てができない。かつ、ヒトは、ある特定の文化的規範の中で生きていかねばならない。すなわち、ヒトは、ある特定の文化が容認する範囲内でなければ、子育ての助力を得ることはできず、実際に子育てができない。そこで、女性が妊娠した場合、その結果として生じる子育てが、その女性の所属する社会で容認され、助力を得られるものであるかどうかについて、認知的に判断せねばならなくなる。妊娠すれば母性本能がオンになるというものではない。中絶、嬰児殺、児童虐待、そして少子化まで、この視点から解明できることを示す。

Keywords: 繁殖戦略、共同繁殖、文化的規範

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O8# 集団内の上下関係がUltimatum Gameにおける意思決定とテストステロンの働きに与える影響

The link between testosterone and Ultimatum Game behavior varies according to player seniority in a Japanese university sports team.

清成透子(青山学院大学)・高橋泰城(北海道大学)・Robert Burris(Basel University)・新井さくら(東京大学)・井上裕香子(東京大学)・山岸俊男(一橋大学)

Abstract: 本研究は、上下関係が明確な集団を対象に、社会的地位と唾液中テストステロン(T)の高低が、Ultimatum Game(UG)で相手に対する譲歩に与える影響を検討した。具体的には、同じ体育会部活に所属するメンバー同士でUGをプレイさせ、提案者の時に相手に提案した金額から、受け手の時に表明した受け入れ可能最低金額を引いた値を「譲歩の程度」とし、Tと学年の効果を分析した。その結果、学年が高い程、相手には譲歩しておらず、日常の上下関係を反映する意思決定パターンが示されたのと同時に、Tの効果は学年によって異ることが明らかになった。最上級生(4年生)はTが高い程、相手に譲歩していないのに対して、下級生(1年生~3年生)はTが高い程、自身の受け入れ可能最低金額より多くの金額を相手に提案、即ち、譲歩を示していた。Tがdominance seekingを促進するのは社会的地位が高い場合であり、逆に地位が低い場合には服従する方向へと働く可能性が示唆された。

Keywords: テストステロン、Ultimatum Game、dominance

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O9* 金銭罰から象徴罰へ:文化的集団淘汰に依らない罰の進化

From monetary to symbolic punishment: the evolution of punishment without the cultural group selection.

土田修平(北海道大学), 竹澤正哲(北海道大学, 北海道大学社会科学実験研究センター)

Abstract: 本研究は、文化的集団淘汰に依拠せずに罰の進化を主張した理論モデルであるBoyd, Gintis, & Bowles (2010) の再分析である。従来のモデルと比較すると、Boyd et al. (2010) のモデルには4つの要因が新たに組み込まれていた。罰の進化に最小限必要な要因の組み合わせを探索するため、実験計画法の発想で要因をひとつずつ除外して検討を行った。その結果、罰が進化するためには 、罰を与えるためのコストは小さくなければならず、また罰を受けた非協力者は敏感に反応して協力行動を選ぶようになるという条件が必要であることを見出した。これは、まさに象徴罰と呼ばれる状況である。本研究の結果は「もし文化的集団淘汰に依らず、罰によって協力の進化を説明するならば、象徴罰でなければならない」ということを示唆する。これは、罰の進化において真に解くべき問いは、「なぜ人は他者を罰するのか」ではなく、「なぜ人は象徴的な罰を受けると協力するようになるのか」という問いであることを意味しているだろう(高橋・竹澤, 2014)。

Keywords: 罰の進化, 進化ゲーム理論, 象徴罰

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O10 暴力の進化論と心理-社会的秩序生態学の統合ーー学校のいじめをモデル現象として

The synthesis of the ecology of psycho-social orders and the evolutionary theory of violence: adopting school bullying as model phenomena

内藤朝雄(明治大学文学部)

Abstract: 人類の同種内暴力や攻撃を主題とする研究は、学問的に知ることにおいても、また、現代社会の平和構築価値に照らした実践的有用性においても、大きな意義を有する。人類が平和的か暴力的かという二分法的傾向の論争が続いているが、その根拠となる狩猟採集民と思われる集団の考古学的および人類学的データは希少で、差が大きく、幅広すぎる解釈に開かれている。それに対し本研究は、現生人類から文明的生活環境を大きく剥奪した実験的集団状況のもとで得られる変化の形態を第三のデータとし、二分法ではない以下の仮説を提出する。すなわち、学校のいじめをモデル現象として生み出された心理-社会的秩序生態学理論と暴力に関する進化論とを接合しつつ、生活環境によって個体内部から個のまとまりを超えて個体間でまとまりを成して変化する、(遺伝子発現-)生理-心理-社会的な平和相と暴力層の相変異傾向が、進化の過程で獲得されたのではないかという第三の説を示す。また本研究は、領域横断的な共同研究により社会科学と生物的内部メカニズムの研究を接合する可能性を有しているかもしれない。
参考→https://www.meiji.ac.jp/koho/press/2016/6t5h7p00000m21y5.html
抜刷請求は naitoa[アットマーク]kisc.meiji.ac.jpまで

Keywords: 平和相と暴力層の二相説, 心理-社会的秩序の生態学, 暴力の進化論, モデル現象としてのいじめ

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O11* Mutual Aid Gameにおける間接互恵性の進化

The Evolution of Indirect Reciprocity in Mutual Aid Game

志村隼人(東京工業大学)、中丸 麻由子(東京工業大学)

Abstract:  協力行動は人間社会の基盤であり、人間社会を理解するために協力行動を公共財ゲームや囚人のジレンマとしてモデル化した研究が多くなされてきた。しかし、1人の受領者に対して多人数が協力する保険や香典のような状況は扱われて来なかった。本研究では、この状況をMutual Aid Gameを用いてモデル化し分析した。
保険や香典では非協力的なプレイヤーは協力を受けることが出来ないと予想されるため、協力の実現には評判が重要となる。よって、本研究では間接互恵性の進化条件に注目した。数ある評判ルールの内、代表的な8つのルールを用いてシミュレーションを行った結果、8つ全てのルールで無条件非協力戦略に条件付き協力戦略が侵入することができた。特に、評判の良い者に協力することでのみ評判を改善できる2つの評判ルールにおいて最も協力率が高かった。協力率はゲームを行うグループの人数が多い程高くなる結果となった。

Keywords: 間接互恵性、社会的ジレンマ、進化シミュレーション

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O12* “協力的パーソナリティ”は安定か?:集団場面での役割可塑性に関する実験的検討

Is cooperative personality stable? : An experiment on role-plasticity in group performance

金 恵璘(北海道大学/日本学術振興会)、豊川 航(University of St Andrews/日本学術振興会)、亀田 達也(東京大学)

Abstract: 従来の研究では、人々の集団への協力行動は安定した個人特性として説明されることが多かった。この考え方に基づくと、公共財供給における集団レベルの生産量は各成員のパーソナリティが生み出す協力量の総和であり、協力的特性を持つ人々からなる集団は常に高い生産性を示すはずである。しかし、これまでの研究では、線形の利得構造をもつ社会的ジレンマを用いて、協力問題をとらえることがほとんどだった。本研究では、生態学的な妥当性の高い限界逓減型の社会的ジレンマのもとで、状況を超えて人々の協力傾向が持続するかを検討するために、Producer-Scrounger(PS)ゲームを用いた実験的検討を行った。実験ではまず、16人の参加者を4つのグループに分け、PSゲームを行った。次に、そこでの協力回数に応じて順位(1位?4位)ごとに新たなグループを編成し、再びゲームを行った。実験の結果は、人々は集団成員の協力率にあわせて柔軟に戦略を切り替えていることを示した。

Keywords: 集団、協力行動、Producer-Scrounger game

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O13* カープを応援し続けるのはなぜか?――カープファンを対象とした集団地位の効果の検討――

Why are you rooting for Carp?: An empirical test of the effect of status.

中川 裕美 (広島修道大学大学院), 横田 晋大 (総合研究大学院大学),中西 大輔 (広島修道大学)

Abstract: 本研究では,内集団ひいきの説明原理として主流である社会的アイデンティティ理論 (SIT; Tajfel & Turner, 1979) と閉ざされた一般互酬仮説 (BGR; 清成, 2002) がそれぞれ成立する境界条件を特定し,両理論の妥当性を検討する。野球ファンを対象に援助行動を測定した結果,協力のコストを明示しないと両理論が支持され (中川他, 2015),明示するとBGRのみが支持された (中川他, 準備中)。しかし,中川他 (2015, 準備中) では集団間関係に注目しておらず,SITに不利な状況設定であった。そのため,本研究では集団地位について検討を行う。SITによると地位が変動的であれば,地位の低い時・高い時に内集団ひいきが生じる。カープファンを対象に,チームの成績が上昇 / 低迷していることをプライミングし (参加者間) 援助行動を測定したが,集団地位による効果は得られなかった。

Keywords: 社会的アイデンティティ理論,閉ざされた一般互酬仮説,内集団ひいき,実在集団

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O14* Warm Heart, but Cool Head: 援助行為における熟慮・計算の重要性

Warm Heart, but Cool Head: Importance of deliberation and calculation in helping behavior

齋藤 美松(東京大学大学院・日本学術振興会特別研究員), 亀田 達也(東京大学大学院)

Abstract: 近年、援助行為を含む向社会行動は直感・情動的基盤に支えられていると主張されている。しかし、援助行為が、他者福利を向上させることを目的とする行動だと考えると、援助行為の動機やそれによる本人の満足(“warm heart”)だけでなく、援助行為の効率性(=実際に他者福利を向上させるか)を考える熟慮・計算的側面(“cool head”)についても問われねばならない。本研究では参加者に、実際に熊本地震の被災地に送られる寄付金を貯めることのできる課題を、他の参加者と分担するゲームをしてもらい、援助行為とその効率性の関係を検証した。その結果、参加者が自分の分担において、課題遂行全体(寄付の総額を決める)についてのマクロな視点を持たず、負の外部性をもつ非効率的な意思決定を行うことが明らかになった。これらの結果は、情動的な援助行為がもつ限界と、熟慮・計算的側面の重要性を示唆する。

Keywords: 援助行為, Warm heart, Cool head

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O15* 二者の相互作用による知覚傾向の収束:心理物理的技法による検討

Convergence of perceptual systems through dyadic interaction: A psychophysical study

黒田 起吏(東京大学大学院),為井 智也(奈良先端科学技術大学院大学),池田 和司(奈良先端科学技術大学院大学),亀田 達也(東京大学大学院)

Abstract: バブル経済などの集合行動を引き起こすような個人間の相互作用過程を解明することは社会的に重要な課題である。本研究では、社会心理学の古典研究であるSherif (1936) のパラダイムを心理物理実験として改良し、画面に一瞬呈示されたドットの数を集団場面で推定するという課題(ドットの数当て課題)をおこなうことで、二者の相互作用における認知プロセスを検討した。実験参加者は、2人が互いの推定値を参照しあうリアルペア条件、自分と同じ知覚傾向を持つ「相手」の推定値を参照するクローン条件、他人の推定値を参照できないソロ条件のいずれかに配置された。実験の結果、相互作用による知覚傾向の二者間収束が見られた。また、リアルペア条件とクローン条件の参加者は、他者の推定値を参照することで知覚傾向が安定するようになった。これらの結果は、知覚システムの社会的形成における個人間接近プロセスと個人内安定プロセスの存在を示唆している。

Keywords: 社会的影響,同調,知覚的集団意思決定

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O16* 他者のためのリスク決定を支える認知過程の研究 ーマウスラボとfMRIによる検討ー

Cognitive processes involved in risky decisions for others ―Investigation by the Mouselab technique and fMRI―

上島 淳史 (東京大学), 小川 昭利 (順天堂大学), 亀田 達也 (東京大学)

Abstract: 不確実性下の意思決定に関する研究によって、自己にとって適切なリスク水準を選択する際の認知過程が明らかにされている。しかし、他者にとって適切なリスク水準を選択する際の認知過程は、その重要性にも拘わらず十分に明らかではない。本研究では自己が報酬の受け手となるギャンブル課題と、他者が報酬の受け手となるギャンブル課題の各々に対してなされる意思決定を比較した。結果、行動解析から自他どちらのためのギャンブル課題でもマキシミン的な配慮が存在することが明らかになった。また、マウスラボと呼ばれる意思決定までの情報探索過程を計測する方法で、マキシミン的注意が自他どちらのためのギャンブル課題においても意思決定開始直後に生じることを観察した。一方、同一タスクを用いたMRI実験の解析から、視点取得を担うとされる脳部位(RTPJ)の賦活パターンに、自他それぞれのための意思決定の差異が存在することが示唆された。

Keywords: 他者のための意思決定, リスク, マキシミン

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O17# イヌは同種他者の選択にどう影響されるか ―イヌ間の社会性及び同調傾向についての検討

Social influence of a conspecific peer on domestic dogs’ choice

張 晨(神戸大学大学院 国際文化学研究科)、山本 真也(神戸大学大学院 国際文化学研究科)

Abstract: 他者から情報を読み取って行動を変容させる社会学習の能力は、類人猿をはじめとするヒトに進化的に近縁な種で多数報告されている。一方、ヒトと社会的に近縁なイヌは、ヒトの表情や指差しなどを読み取る能力に優れているが、同種他者からの影響については明らかにされていない。本研究では、イヌの社会性と社会学習の基盤となる同調傾向に焦点を当て、毎週定期的にイヌの幼稚園に来園する小型犬を対象に、集団場面における行動観察と2個体場面での行動実験を組み合わせ、イヌの社会性及び同調傾向を検証した。行動実験では、白黒の紙カップを使い簡単な選択課題をおこない、イヌが同種他者の選択に同調するか、するなら、その同調傾向にどのような要因が影響するのかを行動観察のデータと照合して調べた。その結果、同種他者の選択への同調傾向には個体差があることがわかった。性別・年齢・個体の社交性・同種他者との親密性などの要因から結果を考察する。

Keywords: イヌ、社会性、同調傾向

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Poster


P1* 語彙・文法の獲得/損失における人口規模の役割

Effect of population size on the gain/loss rates of lexical and grammatical items

小野原 彩香(日本学術振興会特別研究員、東京大学), 井原泰雄(東京大学)

Abstract: 集団人口の言語変化への影響についてはこれまでに、①人口が多ければ新語獲得しやすく、既存項目の損失もしにくい、②人口が少なくても文化的規範が厳しければ、損失しにくい、③無関係という3つの主張が存在する。本研究では、Bromham et al. (2015)に倣い、言語の変化率を獲得率と損失率に分けた上で、言語の経年変化と人口等の社会的・環境的要因との関係から、言語の獲得と損失が生じる諸条件を明らかにすることを目的とした。関西言語圏の端に位置する滋賀県米原市、岐阜県関ヶ原町の中学生544人、祖父母世代(60歳以上)142人の語彙、文法に関する全40項目106語について、目的変数を祖父母世代から中学生にかけての項目の獲得率及び損失率、説明変数を人口に関する諸条件(人口、密度、増加率、高齢化率、15歳未満率)、面積、土地利用割合として線形混合モデルで評価を行った。この結果、人口が多ければ獲得も損失もしにくく、人口が少なければ獲得も損失もしやすいという、損失については①を支持し、獲得については①を支持しない結果が得られた。

Keywords: language evolution,linguistic geography,demography

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P2 コーディネーションゲームにおける記号生成確率モデルを用いた「意味」の推定

Estimating “meaning” of symbols by probabilistic generative model in coordination game

鮫島和行(玉川大学 脳科学研究所), 金野武司(金沢工業大学), 李 冠宏 (北陸先端科学技術大学院大学), 奥田次郎(京都産業大学), 森田純哉(静岡大学)藤原正幸, 橋本敬(北陸先端科学技術大学院大学)

Abstract: ヒトは、抽象化した記号に意味を持たせ、その情報交換を通じて協力・協調行動を行うことで、社会を形成している。ヒトは、記号への意味づけや合意を、どのように獲得または創発しているのか、その認知過程や脳の情報処理過程はわかっていない。本研究では、2者が協調行動を発現すると成功するゲーム課題において、ゲーム上での記号使用の学習過程を記述する確率モデルを提案する。実際の行動実験の結果から、モデルによる記号の意味の変遷を解析した。その結果、字義的意味の成立の次に言外的意味が成立するなど、認知過程が複数存在することがわかり、その変遷を確率モデルの変数として可視化する事ができた。確率モデルによる複数の認知過程の分離は、それぞれの認知過程に対応する脳内過程を脳波や脳血流などから検討するために重要である。

Keywords: 記号、確率モデル、意味推定

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P3 コミュニケーションの成立を成り立たせる記憶特性のシミュレーション

Simulating Human Memory Characteristics Establishing Communication

森田 純哉(静岡大学), 金野武司(金沢工業大学), 奥田次郎(京都産業大学), 鮫島和行(玉川大学 脳科学研究所), 李冠宏, 藤原正幸, 橋本敬(北陸先端科学技術大学院大学)

Abstract: 共通する言葉をもたない人同士がコミュニケーションを成立させるのに,どのような認知プロセスが必要だろうか.本発表は,認知アーキテクチャであるACT-Rを利用し,記憶特性の面からこの問題を検討したシミュレーションを示す.本発表において注目する認知プロセスは「記憶の混在」である.特に,コミュニケーションの成立における模倣の機能を,自己と他者の記憶の混在によって説明することを試みる.シミュレーションの課題として,ペア内で人工言語を共創させる協調ゲームを用いる.この課題におけるパフォーマンスやコミュニケーションの性質を再現するために,明示的に他者を模倣するモデルと明示的な模倣の機能をもたずに自己と他者の記憶を混在させるモデルのどちらが有効かを検討する.その結果に基づき,人との円滑なコミュニケーションを成立させるエージェントの要件を議論する.

Keywords: コミュニケーション,記憶の混在,シミュレーション

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P4* ニホンザルの音声話者交代における発声間隔の調整

Adjustment of inter-call intervals in vocal turn-taking of Japanese macaques

勝野吏子 (大阪大学人間科学研究科), 山田一憲 (大阪大学人間科学研究科), 中道正之 (大阪大学人間科学研究科)

Abstract: 話者交代 (turn-taking) は文化によらずヒトの音声言語に共通した特徴であり、ヒト以外の動物においても鳴き交わしは広くみられる。ヒトは会話の際、相手の発話タイミングを予期し、相手と重ならないように発話する。ヒト以外の動物の鳴き交わしにおいても、重なりを避けるような調整が生じているのかを明らかにすることで、音声に関する時間知覚・制御能力を明らかにすることに役立つ。ニホンザルが他個体と対面した状態で用いる親和的な音声を観察し、音声を相手に一方的に発する場合と、相手と鳴き交わす場合で、発声間の間隔を比較した。鳴き交わしにおいて互いに発声が重なることはほとんどなかった。鳴き交わしは一方的な発声と比べ、発声間隔が短く、1回の発声シリーズ内のばらつきが小さかった。この結果は、ニホンザルは鳴き交わしの際、一方的な発声とは発声のタイミングが異なり、より規則的で相手と重なりにくい発声パターンになることを示唆している。

Keywords: コミュニケーション, 比較認知科学, リズム, 同調

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P5*# 学習により発現するシンタクスにおけるポット型Merge

Pot-Merge in syntax emerges from learning

樋田 智美 (京都大学), 水原 啓暁 (京都大学)

Abstract: ヒト言語におけるシンタクスはMergeという回帰的操作によって行われることで階層構造を形成する.しかしながら,シンタクスが学習によって生起するかは未解明の問題である.そこで,言語の音楽起源説に着目して音楽経験群と非経験群の三和音のMerge順序を判断する行動実験により検証した.三音が逐次的に提示され,実験参加者は第2音と第3音のつながりが強い(ポット型Merge)か,第1音と第2音のつながりが強い(サブアセンブリ型 Merge)かを判断した.このとき各音間の提示時間間隔を変化させることで,その時間的近接性により提示音のつながりを操作した.さらに音楽のMerge順序判断課題に加えて,日本語の三単語からなる複合語を視覚提示し,言語と音楽の相同性を検証した.和音ではポット型Mergeにおいてのみ,音楽経験群と非経験群間に意味的なつながりを示す指標が変化する解析結果を得た.この結果は,言語課題におけるポット型 Mergeを必要とする単語間の意味的なつながりと同様であった.このことは,シンタクスにおけるポット型Mergeは学習により発現することを示唆している.

Keywords: 言語, 音楽, 階層構造

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P6* 語彙項目に焦点を当てた言語機能の進化

The Evolution of the Faculty of Language in Light of Lexical Items

藤田遥(京都大学大学院人間・環境学研究科)

Abstract: 人間の言語能力はいくつかの下位部門から構成されており、そのなかでも中心的な機能を担う統語には、組み合わせ操作である併合(Merge)のみが含まれるとされる。言語的併合は必ず二項分岐であることから、人間言語での併合は言語固有の機能であると考えられることが多い。しかし、二項分岐性は、言語が出現する前の併合が進化した結果として生じた性質とは限らない。そこで、ここでは言語的併合の二項分岐性は、併合の操作対象である語彙項目(Lexical Items)が内在的に持つ特性に起因すると主張する。本研究では、語彙項目は一般的な認知プロセスのひとつである概念化によって成立しており、形式的素性や意味的素性、カテゴリー情報など を含む認知的負荷の高い要素であると考える。言語的併合のみが単純な二項分岐であるのは、このように認知的負荷が高いという性質を持つ語彙項目を対象とするためである と言える。この考えは、言語領域に特化するとされる機能を減らすことにつながるため、人間言語の起源・進化研究の発展にも寄与するものである。

Keywords: 言語の起源・進化,併合,語彙項目

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P7* 統計的構造に適応した社会的規範の学習方略―モデルフィッティングの手法を用いて―

Learning algorithms adapted to the statistical structure of the social norms: By means of model fittings.

喜多 敏正(北海道大学大学院文学研究科), 竹澤 正哲(北海道大学大学院文学研究科・北海道大学社会科学実験研究センター)

Abstract:  人々は個別の事例から帰納的に社会的規範を学習すると考えられる。しかし、その過程については十分に明らかにされていない。そこで、本研究では同じく人々が帰納的に学習するとされる文法を比較対象にして、言語と規範それぞれの学習アルゴリズムを実験的手法によって検討した。今回検討したアルゴリズム間の違いは、正しい事例と間違っている事例、どちらに重きを置いて学習するか、という点にある。本研究では、Hsu & Griffiths (2009) を参考に実験をおこない、架空の文法/規範の学習課題に取り組んだ参加者の回答から、それぞれの参加者に最適なアルゴリズムをモデルフィッティングの手法を用いて推定した。結果、社会的規範を学習するとき人々は言語とは異なるアルゴリズムを用いている可能性が示された。また、このアルゴリズムの違いは規範と言語の異なる統計的特徴の違いに起因している可能性があり、人々はそれぞれの構造に適応したアルゴリズムを用いていることが示唆された。

Keywords: 社会的規範, 言語学習, モデルフィッティング

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P8 文化伝達期間をもつ生活史の進化可能性を探る数理モデル研究

Mathematical modeling on the evolution of life history with stages for cross-generatoinal information transmission

関 元秀(九州大学)

Abstract: 血縁者間での非遺伝情報の伝達は様々な生物種で見られる。一方、ヒトの文化伝達のような、非血縁間を含む情報伝達が見られる種は数少ない。ゲーム理論では、誰かが時間・労力をかけて発見した生存上有用な情報を低コストでコピーする行為はチート行為に分類され、この行為はコピーされる側にコストが発生しない状況下では必ず進化する。しかし一生の長さは有限であるから、コピーする立場でいる生活期(幼年期)の期間や、自ら新情報を発見したり、獲得した情報を活用しつつ繁殖する期間を短くしてまで、コピーされる立場となる生活期(成年期中~後期)をもつことは一種のコストである。この場合、前記2種類の情報伝達期間を完備した生活史は進化しないかもしれない。本研究では上記の生活史進化をとらえた数理モデルを構築し、情報伝達が血縁者間で起きる場合と非血縁者で起きる場合の双方を比較分析し、どちらの場合も文化伝達は進化し得ることを示した。

Keywords: gene-culture coevolution, life history, evolutionarily stable strategy

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P9# 累積的な文化と垂直伝達率の進化モデル

Cumulative culture and evolution of vertical transmission rate: a mathematical model

小林 豊(高知工科大学経済・マネジメント学群),Laurent Lehmann(University of Lausanne)

Abstract: 本研究では、世代間社会学習における垂直伝達率の進化を数理モデルによって分析する。この数理モデルは、累積的な文化を仮定している点、個体の成長に伴う知識水準の変化を明示的に取り扱っている点、学習と繁殖のトレードオフを考慮している点等において新しい。数理モデルでは、個体は一生の時間を、(1)垂直伝達による社会学習、(2)斜行伝達による社会学習、(3)個体学習、(4)繁殖の4つに配分し、この時間配分が進化する戦略であると仮定する。単純化のため、水平伝達は仮定しない。分析は、適応ダイナミクスと進化的に安定な戦略(ESS)の手法を用いて行う。分析の結果、多面発現的な突然変異がないかぎり、一意なESSが存在することが分かった。ESSにおける垂直伝達率が高くなるのは、個体学習において発明される知識の集団内多様度が低い場合、環境変動が緩やかな場合、知識が繁殖効率に与える影響が強い場合であることが分かった。

Keywords: 社会学習,文化遺伝子共進化

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P10 文化進化研究のための人類学データベース構築

An Anthropological Database for cultural evolutionary studies

田村 光平(東北大学学際科学フロンティア研究所)

Abstract: 進化生物学の理論や概念を援用して文化現象を研究する「文化進化」のアプローチでは、考古学と文化人類学で集められたデータが中心的に使用されてきた。現在、社会の複雑化、普遍的な文化変化のパターンの解明、長期間のダイナミクスなどの大きなテーマを扱うことを目指し、欧米を中心にそうした広義の人類学データの集積・統合・規格化がすすめられている。日本の研究者が蓄積したデータの時空間解像度は欧米のそれにひけをとらないと言われているが、一方でデータの散逸と分野間の分断が進んでいるのが現状である。本発表では、現在構築中の、日本の人類学データのデータベースについて紹介する。

Keywords: 文化進化、データベース、人類学

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P11* 社会的支配志向性に対する外集団脅威の状況手がかりの影響―性差に着目した検討ー

The effect of outgroup threat priming on social dominance orientation: Focused on gender differences.

杉浦 仁美(立命館大学),三船 恒裕(高知工科大学), 坪井 翔(株式会社 応用社会心理学研究所), 横田 晋大(総合研究大学院大学)

Abstract: 本研究の目的は,外集団脅威の手がかりによって,男性の社会的支配志向性(Social Dominance Orientation: 以下SDO)が高まるかを検討することである。近年,適応論的アプローチの観点から,集団間葛藤状況における男性に特有の適応心理メカニズムが存在することが提唱されている。この男性戦士仮説によると,男性は外集団から脅威を受ける状況を知覚することで,集団間葛藤に適応した心理的反応が女性よりも顕著にみられると予測される。本研究ではこの反応のひとつとしてSDOに着目する。SDOとは,集団間の地位格差についての志向性であり,集団間葛藤を予測する変数のひとつである。大学生167名を対象に,外集団脅威プライミングを行い,集団内・集団間で囚人のジレンマゲームを実施した後,SDOを測定した。その結果,予測どおり,男性では,外集団脅威の手がかりにより,SDOが高まることが示された。一方,女性では外集団脅威の効果は見られなかった。

Keywords: 社会的支配志向性,男性戦士仮説,外集団脅威プライミング

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P12*# サイコパシーの遺伝的基盤:μ-オピオイド受容体遺伝子とオキシトシン受容体遺伝子による検討

Genetic basis of psychopathy:μ – opioid receptor gene and oxytocin receptor gene

仁科 国之(玉川大学), 高岸 治人(玉川大学), 井上-村山 美穂(京都大学), 高橋英彦(京都大学), 山岸 俊男(一橋大学)

Abstract: サイコパシーは共感性や罪悪感の欠如、自己中心性の高さを特徴としたパーソナリティ障害の一つである。本研究では、これまで共感性との関連が指摘されているオキシトシン受容体遺伝子(OXTR)rs53576と社会的痛みと関連が指摘されているμ-オピオイド受容体遺伝子(OPRM1A)A118Gがサイコパス傾向とどのように関係するかを検討した。439名の男女のサイコパシーをPPI-Rを用いて測定した。実験の結果、OXTR rs53576でAA/AG型の男性はGG型の男性よりもPPI-Rの下位項目であるColdheartedness得点が高いことが明らかになった。またOPRM1A A118GでAA型の男性はAG/GG型の男性よりもFearless dominance得点が高いことが明らかになった。これらの結果は、男性においてはサイコパシーを構成する様々な要素が異なる遺伝子によって規定されていることを示している。

Keywords: オキシトシン受容体遺伝子, μ-オピオイド受容体遺伝子, サイコパシー

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P13 「かわいさ」の発達的変化の種間比較:就巣性-離巣性の観点から

Developmental changes of perceived cuteness in various species: from an altricial-precocial perspective

齋藤 慈子(武蔵野大学教育学部),池田 功毅(中京大学心理学研究科 JSPS),小林 洋美(九州大学人間環境学研究院),橋彌 和秀(九州大学人間環境学研究院)

Abstract: Lorenz (1943)は、乳幼児の身体的特徴、すなわち幼児図式(baby schema)は、ヒトを含めた養育を必要とする動物種の成体に「かわいさ」を感じさせ、養育への動機や行動を引き出す効果があると指摘した。その後多くの研究がこの仮説を支持する報告を行っており (e.g. Glocker et al., 2009)、Kruger (2015) は鳥類と爬虫類においても、世話が不要な種に比べ、世話が必要な種の新生仔を、ヒトはよりかわいい、世話したいと感じることを示している。しかし、ヒト乳幼児の顔のかわいさは、多大な世話が必要である低月齢時より、6-11か月齢の頃に最大になることが知られている (Hildebrandt & Fitzgerald 1979; Sanefuji et al., 2007)。本研究では、就巣性の種と離巣性の種の顔刺激を用い、ヒトにおけるかわいさの知覚と養育動機の発達的変化を検討した。ヒト以外の就巣性の種(ジュウシマツ、ハムスター、ネコ)では新生仔よりも齢の高い仔がかわいいと評定された。ヒトにおいては、先行研究と同様の結果は得られなかった。また離巣性の種(ニワトリ、モルモット、アシカ)においては、一貫した傾向はみられなかった。全種において、かわいさと養育動機は正の相関がみられた。

Keywords: かわいさ,幼児図式,就巣性-離巣性

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P14 配偶者に対する接触回避および愛情の年齢変化

Contact avoidance and marital love for a spouse: differences across age groups

河野 和明(東海学園大学人文学部心理学科), 羽成 隆司(椙山女学園大学文化情報学部メディア情報学科), 伊藤 君男(東海学園大学人文学部心理学科)

Abstract:  配偶者に対する接触回避傾向および愛情が年齢や性によってどのように異なるかを検討するため、20才から69才までの男女1030名にWEB調査を実施した。接触回避得点について回答者の性(男・女)×年代(20・30・40・50・60代)」を分析した結果、男性には年代による変化が見られなかったが、女性は20代のみ男性と差がなく、それ以降の年代では男性よりも有意に高かった。女性の接触回避得点は40代以降の年代が20-30代に比べて有意に上昇していた。一方、配偶者に対する愛情得点には交互作用が認められず、男性が女性よりも一貫して高かった。また、40・50代のみが20代よりも有意に低下していた。接触回避得点と愛情得点には男女とも有意な負の相関があり、女性は男性よりも有意に強い相関を示した。異性に対する接触回避傾向が性的防衛の機能をもつ可能性を含め、結果の考察が行われた。

Keywords: 接触回避,愛情,年齢,配偶者

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P15* 配偶者選択がヒトの顔面形態の集団間差異に与える効果

Effect of mate choice on between-population differences in human facial morphology

能城 沙織(東京大学), 井原 康雄(東京大学)

Abstract: 現生人類における顔面形態の集団間差異について、幅広い集団の形態の
分布を分析した研究の多くが、極端な環境要因がある場合を除いて遺伝的浮動で説明できることを示している。しかし、個々の集団間差異を見ると、比較的移住率が高い集団間でも差異が維持されていることがあり、そのような場合遺伝的浮動以外の機構が関与している可能性がある。実際、沖縄諸島集団と日本本土集団との間に見られる顔面形態の差異は、遺伝的浮動だけでは説明しにくいことが示唆されている。本研究では、遺伝的浮動に加えて、配偶者選択における好みが集団間差異の維持に寄与している可能性を、個体ベースシミュレーションにより検証した。その結果、所属集団の平均的形態に対する好みにより比較的移住率が高い集団間でも差異が維持されうること、さらに他個体の配偶者選択を模倣するmate-choice copyingによってその効果が促進されうることが示された。

Keywords: 配偶者選択, 顔面形態, 集団間差異

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P16* 強化学習モデルを用いた学習戦略の進化動態についての再検討

Reassessing evolutionary dynamics of learning strategy by using reinforcement learning model

加藤郁佳(東京大学理学系研究科生物科学専攻),井原泰雄(東京大学理学系研究科生物科学専攻)

Abstract: 環境中に生得的な行動を行う個体、試行錯誤を行う個体学習者、他者の考えや行動を模倣する社会学習者といった学習戦略が混在する場合の進化動態について、それぞれの学習のコストや環境変動を考慮した数理モデルの研究が行われてきた。しかし多くのモデルで具体的な学習のアルゴリズムは指定していないため、学習におけるコストを明示的に与え、各学習の結果得られる利得についても値や分布があらかじめ決められていた。そこで本研究では学習を「行動・環境の広い状態空間に対して価値のマップをつくること」と考え、強化学習モデルを用いて社会学習・個体学習・非学習戦略を行うエージェントを実装した。環境中での各エージェントの利得分布と頻度変化について試行錯誤のコストは明示的に与えない場合も含めたシミュレーション結果を紹介し、環境変動や社会学習の様式等が与える影響について議論する。

Keywords: 社会学習, 個体学習, 強化学習

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P17# 「法的『トロッコ問題』の初調査実験:倫理問題との回答データの異同分析」

“Crime and Punishment”? Psychology of〝Trolley Problem” as a Moral & Legal Question

和田幹彦(法政大学・東京大学), 小田亮(名古屋工業大学)

Abstract: 「トロッコ問題(Trolley Problem)」を扱う本研究は、約450人の被験者を得て、旧来の倫理的問題に加え、新たに法的問題として回答させ、その異同を統計分析した。
このモラル・ジレンマ問題は、1978年以来 40年近く、単に「倫理的問題」としてしか論じられてこなかった。21世紀に入ってからは世界的に回答調査が行われ、同時にJ. Greene等によりfMRIで思考時の脳の活動計測も行われたが、「責任・処罰を伴わない倫理的問題」との制約があったのである。
本研究では倫理的・法的問題、即ち順に「責任・処罰がありえない/ありえる」という双方の条件下で、先行研究の多い “Spur” “Footbridge” “Trap”の3つのジレンマ状況につき、被験者に回答させた。
その結果、被験者の6割は答が変わらず、4割で変わることを発見し、異同の理由を調査した。
併せて今後の研究の見通しとして、法的・倫理的の双方の条件下での、新たな知見の獲得方法論に言及する。

Keywords: トロッコ問題(Trolley Problem)・倫理と法の共進化・被験者調査実験

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P18* 5人のきょうだいを犠牲にすることは功利的か?:認知負荷を用いた検討

Moral judgment? is examinated by cognitive load

北條逸群(名古屋工業大学) ,平石界(慶應義塾大学) ,小田亮(名古屋工業大学)

Abstract: トロッコ問題のようなモラルジレンマに直面したときの功利主義的判断(5人のために1人を犠牲にする)は認知制御プロセスと関連があり、判断の際に認知負荷をかけると反応潜時が長くなることが分かっている。一方、非功利主義的判断(1人を犠牲にしない)は無意識の情動反応と関連しており、反応潜時は認知負荷に影響されにくい。本研究では、実験室において大学生に、5人のきょうだいを助けるために1人の他人を歩道橋から突き落とすかどうかというモラルジレンマ課題に答えてもらい、同時に別の課題を遂行してもらうことで認知負荷をかけた条件とかけていない条件とのあいだで、判断ごとの反応潜時を比較した。血縁淘汰にもとづいた判断が無意識のものであるなら、1人の他人を突き落とすという判断をした場合の反応潜時が、通常のモラルジレンマ課題のものよりも短くなり、一方で、突き落とさないという判断の場合には長くなることが予想される。

Keywords: 血縁淘汰 ,モラルジレンマ ,反応潜時

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P19*# パレイドリアにみられる個人差と適応的意義

Individual differences in pareidolia and adaptive significance of them

本城貴基(名古屋工大),武田美亜(青山学院女子短大),小田亮(名古屋工大)

Abstract:  自然風景の中に本当は存在しない顔や図形を見つけ出す現象は、パレイドリアと呼ばれる。このように、人が視覚におけるFalse-Positive Errorを起こし意味のないところから意味のある何かを認識する性質は、適応的であるために進化してきたという説がある。先行研究ではパレイドリアの統合失調症や認知症との関連が指摘されているが、健常者間の個人差を生み出す要因について詳しく調べたものは少ない。また、もし誤認識のメカニズムが共通であるならば、パレイドリアを多く経験する人は、他の場面でもFalse-Positive Errorを起こしやすいと予測できる。本研究では大学生を対象とし、空間周波数を操作したいくつかのノイズ画像の中に何かが見えるかどうか、統計的有意差の知覚におけるFalse-Positive Errorの起こしやすさ、そしてBig Five等の特性のあいだの関連を、質問紙を用いて調べた。

Keywords: パレイドリア,False-Positive Error,適応的

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P20*# フィールドにおけるサンクショナーに対する評価

Reputation of sanctioners in the field

稲葉美里(北海道大学文学研究科),高橋伸幸(北海道大学文学研究科),宮崎梨奈(無所属)

Abstract: 罰や報酬などのサンクションの導入は、協力的な社会を形成するための有効な方法である。先行研究では、人々はコストをかけてサンクションを行使することが示されている(e.g., Rand, Dreber, Ellingsen, Fudenberg, & Nowak, 2009)。サンクションの行使を説明する仮説の1つが、サンクショナーは良い評判を獲得できるという評判獲得説である。先行研究では、この仮説を支持する結果もしない結果も得られている。中でもBalafoutas, Nikiforakis, & Rockenbach (2014)は、フィールド実験によって、罰行使者は何もしていない人と同程度の評判しか獲得できないことを示した。しかし報酬行使者の評判については検討していない。そこで本研究では、ポイ捨てへの注意を罰、ゴミ拾いを褒めて飴をあげる行為を報酬とし、サンクショナーの評判をフィールド実験によって検討した。結果は、所持品を床に落とした時に他者から助けてもらえる程度は、罰行使者<報酬行使者・何もしていない人であることを示し、評判獲得説は支持されなかった。

Keywords: サンクション,評判,フィールド実験

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P21* 利他主義者の見極めは気分に影響されるのか?

Alturism detection is influenced by mood

田井中智美(名古屋工業大学)、平石界(慶応義塾大学)・小田亮(名古屋工業大学)

Abstract: これまでの研究により、人は非言語的な手掛かりによって利他主義者と非利他主義者を見極められることが明らかになっているが、そのメカニズムの詳細は分かっていない。本研究では、見極めの際に特定の気分を生起させる操作を行うことにより、気分が見極めに及ぼす影響について検討した。見極めの対象として、Oda et al.(2009)において用いられたのと同じ利他主義者と非利他主義者の男性10人の動画を使用した。これを第三者である実験参加者に見せ、それぞれの男性と分配委任ゲームを実施してもらうと想定した場合、相手に委任するか委任しないかを判断してもらった。判断の最中にヘッドホンで明るい気分にさせる音楽を聴いた群と暗い気分にさせる音楽を聴いた群とのあいだで、見極めの正確さを比較した。見極めが素早く直観的な過程によって行われているのなら、生起させた気分が見極めの正確さに何らかの影響を及ぼすと考えられる。

Keywords: 利他主義、気分操作、分配委任ゲーム

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P22*# 蜘蛛の絵は独裁者ゲームにおける利他行動を促進するか?

Does the image of spider enhance altruistic behavior in dictator game?

藤井 貴之(玉川大学、日本学術振興会), 仁科 国之(玉川大学), 松本 良恵(玉川大学), 李 楊(メルボルン大学), 後藤 晶(山梨英和大学), 高岸 治人(玉川大学)

Abstract: 本研究では、目の絵と蜘蛛の絵といったストレス反応を生じさせるような異なる刺激を用いて、利他行動の促進には社会的な刺激のみならず、非社会的な刺激でもストレス反応が生じれば利他行動が促進されるのかを検討した。40名の大学生が独裁者ゲームを目の絵条件(目の絵6回、図形6回)と蜘蛛の絵条件(蜘蛛の絵6回、図形6回)に分かれて(参加者間要因)行った。ストレス反応の指標として唾液中αアミラーゼを独裁者ゲームの前後で測定した。実験の結果、目の絵の効果は見られたが(提供額:目の絵>図形)、蜘蛛の絵の効果は見られなかった(提供額:蜘蛛の絵=図形)。また、ストレス反応の変化が大きい人ほど目の絵の効果が高かったが、蜘蛛の絵の効果とは関係しなかった。これらの結果は、利他行動は蜘蛛の絵といった非社会的な刺激では促進されないこと、また目の絵の効果はストレス反応が重要であることを示している。

Keywords: 利他行動, 社会的ストレス, 独裁者ゲーム

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P23* 内集団をひいきすることによる一般交換の成立機序

The formation of generalized exchange based on “in-group favoritism”

小野田 竜一(北海道大学大学院),高橋 伸幸(北海道大学大学大学院・社会科学実験研究センター)

Abstract: 本研究の目的は、一般交換(皆が一方的な利他行動を取り合う状況)を成立させる仕組みを明らかにすることである。本研究と同様の目的の元、小野田・高橋(2016)は、2つの集団がある社会において、どのような戦略が一般交換を頑健に成立させるのかを進化シミュレーションによって検討した。その結果、内集団成員にも外集団成員にも同程度に利他的に振舞う普遍主義戦略と、外集団成員よりも内集団成員に対して利他的に振舞う内集団ひいき戦略が一般交換を成立させることが示された。さらに、普遍主義戦略よりも内集団ひいき戦略のほうが一般交換を頑健に成立させることも示された。本研究では、数理解析を用いても、小野田・高橋(2016)の結果が再現されることが分かった。この結果は、内集団ひいきすることによって一般交換を成立させる仕組みが発見され、さらに、その仕組みは非常に頑健に一般交換を成立させる仕組みであることを表している。

Keywords: 利他行動 一般交換 間接互恵性

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P24 日本先史時代における暴力と戦争

Violence and warfare in Japanese prehistory

中尾央(山口大学),中川朋美(岡山大学),田村光平(東北大学),有松唯(東北大学),松本直子(岡山大学),松木武彦(国立歴史民俗博物館)

Abstract: Although recent studies on the evolution of warfare have been based on various archaeological and ethnographic data, they have reported mixed results: it is unclear whether or not warfare among prehistoric hunter-gatherers was common enough to be a component of human nature and a selective pressure for the evolution of human behaviour. This study reports the mortality attributable to violence, and the spatiotemporal pattern of violence thus shown among ancient hunter-gatherers and horticulturalists using skeletal evidence in prehistoric Japan (the Jomon period; 13000 cal BC to 800 cal BC and the Yayoi period; 800 cal BC to 350 cal AD). Our results suggest that the mortality due to violence was low and spatiotemporally highly restricted in the Jomon hunter-gatherers’ period, and that the mortality was also low though it was spatiotemporally dense in the Yayoi horticulturists’ period, which implies that violence including warfare in Japanese prehistory was not common.

Keywords: altruism, Japanese archaeology, inter-group conflict

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P25* 離れたくないから傷つける

Harming to avoid breakup

喜入 暁(法政大学大学院人文科学研究科),越智 啓太(法政大学文学部)

Abstract:  親密なパートナーへの暴力(intimate partner violence: IPV)に関して多くのリスクファクターが明らかにされている。また,そのメカニズムが進化心理学的に考察されている。すなわち,IPVはパートナーとの破局や自分以外の他者に奪取されることを防ぐための配偶者保持行動の1つであると考えられている。パートナーとの破局や他者による奪取の可能性として,カップル間の配偶価(mate value)の違いが挙げられる。本研究では,配偶価としてパートナーの“魅力”を取り上げ,パートナーの魅力が高いほどIPVの可能性が高まるかどうかを検討した。分析の結果,パートナーの異性に対する魅力が高いと認識している男性ほどIPVの可能性が高まる一方で,女性においてはパートナーの魅力とIPVの関連は示されなかった。これらの結果は配偶者保持行動に関する知見と一致した。今後の研究では,女性の進化手行動としての配偶者保持行動とIPVとの関連を精査する必要があるだろう。

Keywords: 親密なパートナーへの暴力(IPV),魅力,配偶者保持行動

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P26* 1歳半児が示す自他の知識・知覚状態の差異への感受性: 一人称および三人称的視点からの検討

Spontaneous concern and informing by 1.5-year-old infants reflects their understanding of others’ epistemic states: experiments from first and third person’s views.

孟 憲巍(九州大学大学院人間環境学府・日本学術振興会),橋彌 和秀(九州大学大学院人間環境学研究院)

Abstract:  ヒトは血縁淘汰を越えて、また自分に直接的な利益が生じない場合でも、日常的に他者を援助する傾向を持つ(Fehr & Fischbacher, 2003)。この傾向は、生後2年目で既に観察される。1歳半の乳児は、大人が落としてしまったものを大人に拾ったり、大人が開けたいドアを代わりに開けたりという道具的協力行動を見せるのである。この基盤には、他者の目標に関する理解と他者を援助するモチベーションとが必要だと考えられる(Warneken & Tomasello, 2006)。本研究は、他者の「知識状態/知覚状態(知っている/気づいているかどうか)」に対する乳児の敏感性に焦点を当て、2つの行動実験をおこなった。任意の状況を「気づいていない」他者に対する乳児の反応について、一人称および三人称的文脈における行動実験の結果を以下に示す。

Keywords: informing, infant, knowledge states

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P27 コストのかかる旗としての道徳:進化シミュレーションによる予備的検討

Moral as costly flag: A preliminary analysis with evolution simulation.

平石 界(慶應義塾大学), 横田 晋大(総合研究大学院大学), 池田 功毅(日本学術振興会/中京大学), 中西 大輔(広島修道大学), 小田 亮(名古屋工業大学)

Abstract: 近年、進化的な視点から、何が「道徳的」で「正しい」とされるのか、道徳の「内容」の起源を検討する研究が行われてきている。こうしたアプローチは、人々がなぜある特定の道徳内容を保持しているか説明するだろう。しかし道徳には、人々がそれを自らの行動指針として用いるだけでなく、他者の行動についても「道徳的な」賞賛や非難を行うという、「形式」としての普遍性があるように思われる。Dynamic Coordination Theory(DCT; DeScioli & Kurzban, 2013)は、この道徳の「形式」には、人々の行動を一致させ、集団内でのコーディネーション問題を解決する機能があると論じる。我々はDCTをベースに、道徳「形式」によって、1)コーディネーション問題が解決され、2)コストを掛けて道徳的主張(非難・賞賛)を行う個体の適応度がプラスになり、3)道徳的主張に影響される個体の適応度にもプラスに働くのか、進化シミュレーションによって検討している。本報告では、理論的背景と予備的な分析結果について紹介する。

Keywords: 道徳, 進化シミュレーション, コーディネーション問題

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P28* 他者の人間性の見極め能力と排除回避傾向の関連性

Rejection avoidance and the ability to discern cues of others’ personality

橋本 博文(安田女子大学),槇本 美穂(安田女子大学),沖 美魅(安田女子大学),柘植 絵里香(安田女子大学),富田 清香(安田女子大学)

Abstract: 本研究の目的は,他者の人間性の見極め能力に対して排除回避傾向が影響を与える可能性を検討することにある。具体的には、既存の関係から排除されることを回避しようとする傾向性は、(初対面他者の人間性の見極め能力ではなく、)他者がいかなる人間関係の中に埋め込まれているかという外的な情報をベースとする人間性の見極め能力(以下,関係性ベースの見極め能力)を促進するとの仮説を検討する。絵本の読み上げ課題に取り組むターゲットの様子をビデオで撮影し,読み上げているターゲット本人のみを切り取った映像(一人映像)とターゲットと友人が一緒に映っている映像(二人映像)を刺激とする見極め実験を実施したところ,1)一人映像よりも二人映像を参照する際に他者の外向性の見極めが向上すること,そして2)その向上は排除回避傾向が強い者に顕著に示されることが明らかにされた。これらの結果は,本研究の仮説を部分的に支持する結果であった。

Keywords: 人間性の見極め,関係性,排除回避

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P29* コストリーシグナリングが間接互恵状況における協力的均衡へ及ぼす効果

The effect of costly signaling on cooperative equilibrium in indirect reciprocity

田中 大貴(神戸大学, 日本学術振興会), 大槻 久(総合研究大学院大学), 大坪 庸介(神戸大学)

Abstract:  間接互恵性の研究においては、フリーライダーが行う非協力と、そうしたフリーライダーに対して行う利己的意図によらない非協力をいかにして区別するかという問題がある。従来、この問題は非協力者のパートナーの評判情報(二次情報)により解決可能とされてきた。しかし、発表者は、二次情報に依存せず、非協力者自身がコストのかかったシグナルを用いることで自身の非利己的意図を伝達できる「意図シグナル戦略」を考案し、その妥当性を理論的・実証的に示した(Tanaka et al., 2016)。
ただし、この戦略は協力場面だけでなく非協力場面においてもコストを支払う必要が生じるため、二次情報を用いる戦略より非効率的であるかもしれない。この可能性を検証するため、本研究では意図シグナル戦略とStanding戦略それぞれで構成された集団での間接互恵シミュレーションを実施し、協力の実行エラー率が高く、協力の利益がコストに対して十分に大きければ意図シグナル戦略がむしろ効率的であることを確認した。

Keywords: indirect reciprocity, costly signaling, intention

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P30* 協力者は協力的な相手を短時間で探索する?~報酬分配者の選択に協力性が及ぼす影響~

Intuitive decisions for prosocials, but not for proselfs: Decision making in the partner choice game.

井上 裕香子(東京大学大学院総合文化研究科)・齋藤 慈子(武蔵野大学教育学部)・長谷川 寿一(東京大学大学院総合文化研究科)・清成 透子(青山学院大学社会情報学部)

Abstract: Randら(2012)によると、経済ゲームにおける協力の意思決定は直感的な意思決定プロセスによって促進されるため、非協力の意思決定よりも素早いことが示されている。ただし、Randらの実験は相手についての情報がなく、かつ、相手を選択できない状況であった。現実には、協力するか否かを決定する前に、誰と協力関係を形成するかを選択する必要があり、予めアサインされた相手に対する直感的な協力行動の素早さが何を意味しているのか明らかではない。そこで本研究では、複数の候補者の中から自分の報酬を分配する相手を選択する課題を実施し、参加者の協力性(Social Value Orientationによって測定)と選択時間、および、選択時に各候補者の過去の分配行動情報を参照する程度について検討した。その結果、協力的な人は利己的な人よりも相手選択までの情報探索量が少なく、短時間で意思決定しており、かつ、誰に対しても平等に振る舞う相手をより多く選択していることが明らかになった。

Keywords: 協力,向社会性,反応時間

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P31# 分業における協力の進化と罰について:産業廃棄物の不法投棄を例に

The evolution of cooperation and punishment in the division of labor: Industrial waste illegal dumping as an example

中丸 麻由子(東京工業大学)、志村 隼人 (東京工業大学)、北梶 陽子 (高知工科大学)、大沼 進 (北海道大学)

Abstract:  協力は人間社会の基盤であるが、非協力者のほうが協力者よりも利得が高くなるために協力を達成することは難しい。
本研究では人間社会において顕著に発達している分業における協力の進化に関する理論研究を行う。産業廃棄物の5行程からなる処理プロセスにおける分業を例とする。各行程で適正処理を行えば環境には悪影響はないが諸々のコストがかかる。一方、不法投棄を行えば処理コストがかからない。しかし廃棄物の種類によっては自然環境に負荷がかかり最終的には全員に原状回復等のコストがかかってしまう。つまり、社会的ジレンマの状況になる。不法投棄を抑えるために二種類の罰則がある。現状のデータでは罰則の効果があると解釈が可能だが、不法投棄が増えたという報告もあるという。各罰則がどの程度不法投棄を抑制/促進するのかについて、進化ゲーム理論のリプリケーター方程式を用いて解析を行った。
結果は(1)2つの罰則とも適正処理の進化を促進したが、(3)罰則のタイプによっては、罰則が無いときに比べて、不法投棄の進化も促進した。

Keywords: 協力の進化、分業、進化ゲーム

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P32 支配傾向の高い人は謝らないのか?

Are people high in trait dominance less likely to apologize?

大坪 庸介(神戸大学)

Abstract:  謝罪は服従シグナルに進化的な起源をもつと考えられている。したがっ、支配傾向の高い人は他者に服従のシグナルを送りたくないと考えられるので、対人的な謝罪もしにくいのではないかと予測される。そこで本研究では、探索的に支配傾向と謝罪傾向の関連を検討した。大学生87名(女性49名、男性37名、不明1名)が、Cheng et al.(2010)のDominance-Prestige Scale、Berry et al.(2005)の赦し傾向尺度、Howell et al.(2011)の謝罪傾向尺度に回答した。また、実際の対人的加害場面をひとつ想起してもらい、そこで相手に謝罪したかどうかをTabak et al.(2012)の和解行動チェックリストにより報告してもらった。その結果、支配傾向と赦し傾向、謝罪傾向がそれぞれ負の相関をしており、支配傾向の高い者は被害に遭った場合には相手を赦しにくく、加害者になった場合は謝罪しにくいことが示された。ところが、実際の加害場面の回想では支配傾向と謝罪の間に相関は見られなかった。この矛盾は今後の検討事項である。

Keywords: 支配傾向, 謝罪, 赦し

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P33# サイコパシー傾向と集団間葛藤-内集団協力と外集団攻撃の性差

Psychopathy and intergroup conflict: Sex differences in ingroup cooperation and outgroup aggression

横田 晋大(総合研究大学院大学)

Abstract: サイコパシー傾向が高い人は他者に対して攻撃的であるとされる。しかし、その攻撃性は無差別なものではなく、合理性を追求した道具的なものである。では、いかなる状況下でサイコパシーは攻撃的になるのだろうか。本研究では、集団間葛藤状況におけるサイコパシーの内集団協力と外集団攻撃行動を検証した。発表では、一般人を対象としたweb調査と実験室実験の結果を紹介する。調査では、集団間葛藤ゲームのシナリオで内集団への協力意図を測定した。その結果、サイコパシー傾向が高い女性が内集団へ非協力的に振舞っていた。一方、実験では、集団間葛藤ゲームにおいて、外集団攻撃を測定した。その結果、自身の行動が他者に公表されると教示されると、サイコパシー傾向の高い女性は外集団に攻撃的になった。一方、サイコパシー傾向が高い男性は、外集団脅威を強く感じた場合に外集団へ攻撃的になっていた。

Keywords: サイコパシー, 集団間葛藤, 性差

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P34 囚人のジレンマにおける共起ネットワークの性差

Gender differences of co-occurrence network in Prisoner’s Dilemma game

安念 保昌 (愛知みずほ大学)

Abstract: 囚人のジレンマ(PD)ゲームにおける実験参加者間の4状態を和(CC)、惨(DC)、搾(CD)、底(DD)の4種類の文字にし、実験参加者ごとのPDゲームの関係性の状態の3時間ステップを3文字単語(64種類)からなる文に変換した。それに対して、テキストマイニングを行い、その共起ネットワーク構造における性差に、進化的意味を見出した。対戦相手によって、構造は大きく異なった。和和和はTFTとGRAを相手にした場合とも男と共起し、底底底は、TFTと対戦した場合に女と共起し、RANDOMと対戦した場合に男と共起し、GRAおよび人と対戦した場合には、男女とも共有共起した。男性は、戦略が読めない相手に対しては、両極の状態になりうるオプションを持つのに対し、女性にはそれがないことが示唆された。また、戦略の良く読めるTFTの様な相手からは、女性の方が搾取したあげく、底底底に陥るが、男性は、逆に和和和を選ぶ違いが見られた。対外的に幅広い戦略を持たざるを得ない男性と、狭い世界で利得をあげようとする女性の戦略に違いが見られた。

Keywords: テキストマイニング, 時系列構造, 囚人のジレンマ

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